雑務もほとんど終わり、ようやくクレジットカードの確認を始めたが、あまりの仕事の少なさに唖然とした。満室なので多いと勘違いしていた。拍子抜けして一週間後の予約の確認や企業集計など、面倒な仕事も全て終わらせてから、1時ごろに暇を持て余すことになった。持って来た昼飯のゆで卵三個を平らげて、最後の仕事を終わらせた後ははがきを書いていた。一日一枚しか書かないつもりで丁寧に書いたので、最近のはがきよりはきれいに書くことが出来た。今日の予定もある程度書き、Amazonで保冷材のベストについて調べた。自作をする方法も調べて、ダイソーの保冷剤をダクトテープで固定する方法を妄想していたら大浴場の清掃の時間になった。
女性大浴場と男性大浴場を清掃して、洗濯し終わったエプロンを干して2時20分頃に休憩に入った。先日は休憩中はずっと推しの子を見ていた。とりあえず放映されている分は全て視聴した。早く続きが見たくて仕方が無いので、本当に仕方が無くなったら輝夜様は告らせたいを見て乾きを癒そうと思う。
のどが痛い。先日の扇風機が原因であろう。仕事中にふと思ったが、相方が、重要な秘密である社員の妊娠について、その日その出勤で私に暴露した理由について考えていた。秘密を守る守らないと言うのは、当人の口の固さとは関係が無く、話が好きかどうかに比例するのではないか。私はこの秘密を人に言うことは想像がつかないが、それは、私が話すのが好きではないからだ。秘密を守れるとか守れないとか、そういう感情や性格とは全く関係が無い。相方は話すのが好きで、私と夜勤をやる上で頭の片隅に常にそのことがあって話さずにはいられなかった、それだけの話なのだ。
浮気についても同様の事が言えるのではないかと思った。浮気とは当人の性格や、貞操観念に関わらず、浮気の機会の多寡に比例するのではないか。私自身、この考えが思い浮かんだ理由や後付けの根拠について考えたが、ただの思い付きでしかないように思われた。今思いつく根拠としては、口の固さと話好きの相関関係が普遍的な法則で、それに浮気と異性との交流の相関関係も類似している、当てはめることが出来るという論証なのではないか。憶測に過ぎないし、暴論のようにも見える。実際には、性格も多少は影響すると思う。3時16分。
残りの休憩の時間は下らないことを検索して潰した。特に見ていたのはQuoraだった。久しぶりに開いてしまったが為に、今まで読んでいなかった分をまとめて読んだ気がする。休憩が終わってもしばらく読んでいて、ふと小学一年生の問題と書かれていた図形の外周を求める問題に当たった。こういった算数の問題は自分のもっとも得意な分野であった。しかし、その問題を10分ほど考えても結局解けず、答えを見てからもしばらく考えた。理解をするのに解くのと同じくらいの時間がかかった。たまらず相方にその問題を出した。コメントはいくつか下にあったが、殆どは重複しない独自の解き方をしていた。私自身、そこに書いていない方法で納得をすることになった。
相方が解ければ、私のたまたま解けなかった可能性に希望が持てたが、相方も解けなかったので絶望的になった。私が算数を解く能力が衰えていて、それに類似する、唯一の長所のSPIなども、点数が取れなくなっているのだろう。間違いなく加齢のせいだ。またはそれを解く必要が無くなった為に衰えたか、いずれにせよ、自分の中のピークと言うのは過ぎてしまったのであろう。フロントに立ちながら、深く絶望した。
今までの私は、自分の年齢、若さによるアドバンテージを才能と信じて疑わなかった。これが残り数十年、還暦を迎えるくらいまで衰えないと勝手に思い込んで、他人を見下しながら生きてきた。しかし、私が思っていたよりもはるかに早く老化が進行していて、目に見える形として表れてきてしまった。どうしようもなく手遅れだ。若いと言う事は、若さを信じて疑わないと言う危うさを秘めている。若いうちに自分を自分たらしめる勉学や社会的地位、生活を線路上に乗せなければならない。私が今まで馬鹿にしてきた全てが私を馬鹿にしているような気がした。
ホテルに就職したい。私はキッチンカーなぞさっさと見切りをつけて、社会的地位を付けなければならない。これは老いへの恐怖からだ。そして、現実を見つめ始めているという紛れもない兆候だ。ずっと、10年後の自分を想像して仕事中の暇な時間を過ごしている。十年後の自分はガソリンスタンドで働いていないだろうし、工場でも働いていない。家を売っている気もしないし、キッチンカーもやっていないだろう。サービス業はやりたくない。なんだかんだでやっているとしたら、人生計画の失敗とすら言える。今まで殆どサービス業しかやってこなかったし、工場を見下して生きてきた。私のあこがれは技術者や管理職か。管理職は、ここ数日で見えてきた10年後の自分の進路であった。
このホテルに就職して、地道に働いて役職を得て、マネージャークラスになれれば御の字だ。一般社員の給料は正直低いが、勤続を続ければ私にだって敵わない夢ではないだろう。そのチャンスが今年やって来る。やはりキッチンカーを辞めるべきだ。その話を相方に少しした。
相方が引継ぎをした。8時20分頃には終わっていた。相方は今日は朝食を食べていくらしい。ミートドリアはホテルの朝食バイキングの中で最上位に属するうまさだ。卓上のお菓子をつままなくなり、食べ放題を避けるようになってからというもの、食欲をお金を払って満たすとか、タダ同然で食べ放題のカレーを食べるとか、一見幸福に見える事が自分を不幸に陥れていたのだと気が付き始めていた。非計画的に食事を制限している。摂取カロリーが1000kcalに満たない日もある。そんな日もジムに行き、筋トレとランニングをしてランニングで推定400~800kcalを消費しているし、筋トレも運動強度は分からないが妥協はしていないつもりだ。みるみる痩せて、一か月に満たないうちに83kgだった体重が79kg前後に落ちた。安定して80kg以下をキープしている。
帰宅をして、朝食を作った。昨日は夕食を抜いたので、運動前にカロリーを摂取しないと活動限界が近くなる。今日はそうめん一束に、卵3個と鯖缶を180g、わかめを入れてみた。わかめが悪かった。磯の香りが強すぎて、ただでさえ不味い100円の鯖缶が気持ち悪くて食べられない。スマホを弄りながらだましだまし食べた。完食には至らなかった。調べている過程で鯖缶のたんぱく質が180gだと40g程度だと知った。卵3個で15g程度、合わせて55gも摂取することになる。たんぱく質の消化に、ただでさえ数値の悪い肝臓や、消化器官全般に負担がかかることは想像に難くない。その上不味いときた。
本当はごみを捨てたり家を掃除するつもりであったが、今日ばかりは何もしたくない。何もしないと言う事を享受するのはプライドなのか習慣なのか許せない気がした。最悪ジムに行けなくてもいいかなと頭の片隅に考えていた。何もしないと決めたので、携帯の電源を切った。最悪過眠して寝坊しかけても、腕時計のアラームが起こしてくれるはずだ。扇風機を退けて寝た。
14時30分頃に起床した。あまり良い寝起きではなかった。糖質をそこまで摂取していないからか、ドカ食いして寝た後の体中に満ち満ちたエネルギーを感じることが出来なかった。残っているのはあの磯臭さくらいだ。ちんたら支度をしていたせいで、ジムに行く限界の時間の15時30分を過ぎた。仕方なく、ランニングをしに自然公園に向かった。
ランニングも最近の気温でめっきり走れなくなった。そもそも走れたわけでもないが、段々と走れる距離が短くなっている。脚が痛くて走れないとか、虫に刺されて帰るとか、しょうもない理由で帰る日が増えた。無料の駐車場に止めて、少し歩いて水飲み場のエリアに着いてから走り出した。ジョギング以下、時速6kmの早歩きを走っている風にしていた。しばらく走った後、段々と調子が良くなってきた。寝る前に食事を取ったからであろう。スタートラインまで戻って、水を飲んでから、時速12km以上を目標にして走り始めた。
野外で時速10km以上で走るのはほぼ高校生以来だ。最近はトレッドミルの最後に速度を速くして走ることが増えたので、足が感覚を覚えていた。息継ぎがうまくできず、溺れそうになりながら走っていた。フォームは悪くなかった。あまり速く走るとフォームも糞もない。ジョギングと違ってストライドもピッチも限界だ。10分ほど走り、もしかしたら3.1kmを完走できるかもと思ってはいたがリタイアした。息が持たなかった。
肺活量を鍛えなければならない。水泳もやっていたし、歌うのも好きなので肺活量は元々自信があった。段々と衰えて、ずっと使わなかったせいで常人レベルに落ちていたようだ。高山で鍛えるか、マスクをして走るか、いずれにせよ肺活量の問題が浮き彫りになった。歩いて駐車場に行き、天気が悪くなりそうなので傘を持って、また水飲み場に戻った。
再度一周歩こうかと思っていた矢先、アブに足を刺された。左足を刺されたので、警戒しながら水飲み場についた時に右足も刺された。喉の痛みと相まって壮絶な殺意が沸いた。80cmの傘は得物としては長すぎて、アブを追い払う事が出来ない。腹が立って車に戻って帰った。
無念な結末だ。本来は車に積んでいたつもりの虫よけスプレーがどこかに行ってしまったのが要因の一つだ。もしあったとしても使わなかった可能性が高い。今日の事でようやく虫よけスプレーが必須だと再認識した。ついでに、車をダイソーに走らせながら、携帯の電源を入れて、推しの子の二期のオープニングであるファタールを聴いた。キタニタツヤがアイドルのような曲を歌っている。コラボしている面々の個性も出ている。二度と同じような曲がこの世に生まれないのではないかと言うくらいの奇跡の融和であった。
ダイソーで保冷剤を見て、ベストに出来ないかを考えるつもりであった。今日は頭が働いていないらしく、普段は買わないような皿や卵ケースや棚などの雑貨を大量に買った。彼女から電話がかかって来て、ダイソーにいると伝えると十数分後に来た。時計や電池も買った為、五千円もかかってしまった。彼女の浴衣や、安い飲み屋に連れて行ってやれる金額だ。それを必要でない雑貨に使ってしまったことを少し後悔した。隣接しているスーパーでは、私がすき煮風の何かを作りたくて、彼女は豚味噌キャベツ炒めを作る為の材料を買っていた。結局、もうかさめという安価で鶏肉に似たややパサパサした白身魚の切り身を三切れ購入して、ネギは口臭に出るからとねぎの仲間の水菜を買い、ダイエットにとしらたきを5袋近く購入した。彼女に怒られた。
帰宅してすぐ料理をしていたら、彼女も料理の支度を始めた。冷蔵庫の豚肉が腐っていたので作れないらしく、私のすき焼き風だけが今日の食事となった。それと、彼女が貰ってきたというトマトをめんつゆにつけていた。ダイソーで300円する一番でかい丸皿の上に、切っていないしらたきを煮てパスタのように盛りつけた。盲点だったのはしらたきがパスタより長いと言う事だ。うまく皿には載せられなかったが、適当な味付けの割には完成度が高くなっていた。
割り下を作るようになってから安くすき焼きを作れるようになった。醤油とみりんと砂糖を同量入れれば割り下となる。出汁や酒は必要ない。一般的な家庭であれば必ず作ることが出来る。今回は会心の出来であったが、想像しうるに砂糖の量が多かったのではないかと思う。しいたけの軸と飾り切りをした時の切れ端を醤油と砂糖に漬けて置いた。そのたれと一緒に熱い鍋肌に流しいれたのでキャラメリゼの効果も多少は含む。焦げるよりもずっと前に水菜を投入して、乗せるように蒸し焼きをイメージして材料を入れて、最終的にしらたきを入れたことで味のバランスが完璧になった。
彼女が作った麺つゆにつけたトマトやビアソー、ゆで卵を皿に盛ってみた。皿がでか過ぎて必然的に空白の方が多くなる。この空白の演出が盛り付けの醍醐味なのかもしれない。平らげて仮眠の準備をする。洗濯物は出勤前に洗濯し終わるように設定した。既に20時を回っていた。
30分ほど仮眠をして、21時に起床してトイレに行った。食べる量が減り、食物繊維もなかなか取ることが出来ていない。下痢と言う程ではないが、便通は悪くなっていた。本来風呂に入っていたい21時を大幅に過ぎて、21時15分に風呂に入った。23年間も生きているので、頭と顔と体を同時に洗い、ひげをそるのに3分しかかからなかった。流していたファタールが、一曲終わる頃には風呂を出て、髪を乾かし歯を磨き、洗濯物を干した。21時37分頃にようやく家を出て、NHKのPodcastだけ聴いた後に再度ファタールを聴いていた。きっとこの曲は歌えると思う。メフィストやヨルシカの曲に比べれば難易度は圧倒的に低い。
出勤をして引継ぎの準備をした。今日はてっきりベテランの相方とだと思っていたが、まれに夜勤に入る社員とであった。少々不安になりながら自分の仕事を進めていた。指示書すら面倒くさいのに、夕食代の伝票を捨てるスタッフが夕食にいて、ややこしくさせていた。咳が止まらない程のどが痛かった。返って仕事に集中することが出来たかもしれない。