ルートインが終わってからすぐに寝たので、起床して出かけたが夜勤明けの日という感覚はなかった。帰ったら必ず彼女と家の掃除をしようと決めていた。彼女と私は掃除に対しての感覚が全く違う。これは何度か掃除する場面に直面した時に分かったことだが、私は家の掃除を、まるで仕事のように淡々とこなすことが多い。あるいは、面倒くさい用事をさっさと終わらせるように、短時間だけ不貞腐れながら片づけることも多い。彼女は、これのどちらにも当てはまらないが、どうやら見ている限り掃除に取り組むに当たって必要な熱意が欠如しているように思われる。私が熱意をもって掃除に取り組むとき、彼女は充電の切れかかった携帯のような動作で、きっぱりと、ぜんまいが切れるようにやる気をなくす。こういうとき、私は結果を重要視する傾向にある。この場合は掃除を完了させるという目的のためには、どのような手段を用いてもよいという不文律が自身の中にある。その前提がまた、彼女と同時に掃除をする為の障壁になっているように思う。
とにかくこの日は二人で掃除をするということのために、変わった手法を用いることにしたのだった。彼女の行きたいといったセリアに行き、金額を考えずに購入し、スーパーでも金額を考えずに助六寿司やおにぎり、ジュースを買って、サイゼリヤでワインと前菜を食し、ビールを買って、唐揚げ屋でから揚げを買い、家で飲みながら掃除をすることにした。最後以外はうまくいった。私の場合は、仕事をしたから豪遊してもよいという思考になりがちなので、手順を逆にして、掃除をするという前提で豪遊すればはかどるという目論見だったのだが、いつものように彼女はやる気を失ってしまった。
一人で掃除するから寝てていいと言っても聞かないし、私の熱意を削ぐ行為をするので、やはり二人で掃除をするのは不可能なのかもしれないと思った。私の中で掃除は絶対的な正義で、その為の行為は全て正当化されるというのに、彼女にとっては掃除をしない理由を見つけることが正義とでも言わんばかりの言い訳を並べるのだ。失意というほどではないが、掃除という正義の名のもとに、私は一人で掃除を断行せざるを得ない。そこに彼女の思想への嫌悪だとか、将来の不安とかがないと言ったら噓になるが、そんなものは些事であって、掃除をしたという結果だけが欲しいのだ。
いっそ私が家事をやるから彼女が働きに行けばいいと思う。一人でやるより疲れるからだ。あまり愚痴のような内容を書くのは好ましくないかもしれないが、私の飾らない率直な意見を書いていて、他者への発散というより自己の整理なのだから、私の中では愚痴という要素は全くない。単純な興味としてだが、私の中で一体どのようにして感情が揺れ動いていて、その行く末に、今回の場合は同じ事案を何度も繰り返していて、今一度確信を得た気になれば、再び同じことを繰り返そうとしたとき、あらぬことを期待したり、私の熱意を削がれることも勘定に入れたりできるということが少し新鮮だった。
あまりつまらぬことを書いていても、読み返すときに陰鬱になるだけだから、この日考えていたことなどを思い出す。23日がパチンコ屋最後の出勤になるので、少量の土産を買った。コメダで働いていた時はギリギリまでは普通に働けたが、最後の最後で義理を欠いてしまった。制服をまだ返していない。パチンコ屋はキッチンカーを出店する可能性が高いので、最後はしっかり締める必要がある。制服は再来週の月曜日に持っていく予定だ。
この日はお金を使い過ぎて2万円くらい食事に使った気がする。後で勘定を見るのが怖いが仕方ない。意図してではないが、周りに借りを作っていて、飲みを奢る予定の友が一人いる。金銭的な負債と、後で帰ってくる予定の金額を比べたら圧倒的に後で帰ってくる金額の方が高いのだが、今すぐ手に入るわけではないし、借りている金もある。
彼女には自分で生活するだけの能力や金銭的な余裕はあるのだろうか。私は一人暮らしをしていたし、当然自分一人分の生活を賄うだけの生活能力はあるつもりだが、仮に休暇が倍になったところで、二人分の家事を出来る気がしないし、どうやら休暇はそのままで二人分の家事をしないといけないようだ。彼女はたまに私に結婚を迫ってくる。理由を問いただせば、結婚がしたいからという。結婚をしないということは、いつでも別れられる状態にいたいからで、自分では駄目なのかと不安になるというが、私としては今後の事の方が不安で、その心配の根源は生活に尽きる。私が人一倍頑張ったところで、伴侶に足を引っ張られるというのはたまったものではない。苦を共にできないならともに暮らすことはできない。今のところ、苦を共にすることはできないようだが、代替案として家事が済んだという結果さえ手に入るのならばそれで十分である。家政婦でも雇えるなら雇えばいいし、別居でもいいなら結婚しようと思う。
